フッ素について

フッ素の研修会に参加してきました。フッ素(専門的にはフッ化物と呼びます)は歯を強くして虫歯予防に効果的とされています。当院でもフッ化物は、幼少期を含めほとんどの方への虫歯予防として局所応用しています。
 今回の研修会は公衆衛生におけるフッ化物の利用とその効果を習熟することを目的に開催されました。個人の医院での利用というより公衆衛生的な利用を主題に講演されましたが、非常に有意義でフッ化物に対してより深く理解することができました。
 フッ化物については、その効果と安全性に疑問や不安を持たれている方も多くいらっしゃいますし、私も実際フッ化物を局所応用(主に塗布)しても外見に変化も全くありませんしその効果を判別する手段も持ち合わせておりません。予防医学において、その効果を判定するためには疫学調査が必要になります。今回の研修会ではその専門でもある国立保健医療科学で統括研究官をされている先生が講演されました。
 フッ化物のむし歯予防効果について、ミクロ的な機序については省略させていただきますが、大規模な疫学調査の例として、ある町の保育所でフッ化物の局所応用(ブクブクうがい)をした園児を追跡調査した結果、小学生(町外の保育所に通園した学童も含まれます、彼らはフッ化物を使用していません。)になるとむし歯を持つ学童の割合は統計的にも差が明らかな状態になっています。また、フッ化物のブクブクうがいを政治的な理由により中止した町では全国平均と比べ低かったむし歯罹患率が中止後は全国平均へ上昇してゆくという調査結果も明らかになりました。そのほか国内のみならず、海外においてもフッ化物応用を疫学調査した論文が多く紹介されその有用性は説得力のあるものでした。
 また、フッ化物の安全性についてですが、世の中すべてのものには「絶対安全」なものは存在しないという前提を理解することが大切だそうです。人間に必須な水や塩分、酸素ですら過剰な摂取は有害となります。
 フッ素は、それ単体では自然界にはほとんど存在せずフッ化物という化合物の形であらゆるものに含まれています。お茶や牛肉、エビやイワシ、リンゴやミカン、ニンジン、ジャガイモ、牛乳にも含まれています。人体中に存在する天然元素15種類のうちの一つで、いままでにアレルギー症状の報告はされていないとのことでした。
 フッ化物への不安として感じる安全性についてですが、その毒性として問題となるものが慢性的な症状(中濃度を長期間)と急性症状(高濃度を大量摂取)に分類されますが、これらも通常利用では考えられない濃度のフッ化物を大量に摂取しない限り起きない問題となります。
 詳しくはご来院いただいた際にご質問していただければお答えできると思います。今回の研修会も今までの断片化された知識を整理するのに参加してよかったです。当院でのフッ化物利用方法に大きな変更はありませんが、させていただく説明は改良されているかもしれません。

2016年08月28日