インプラントの予後について

インプラントの予後について

歯が喪失された後、機能を回復する方法の一つにインプラントがあります。当院でも対応させていただいている処置ですが、患者様との相談で多くいただく質問に「永久にもちますか?」というものがあります。
 インプラントは金属などで作られていますので「むし歯」にはなりませんが、インプラントを支えている顎の骨、歯肉はご自身の体の一部なので、いわゆる「歯周病」になります(インプラント周囲炎といいます)と説明させていただいております。インプラントを支えている組織が喪失されますので歯肉の炎症、インプラントの動揺と痛み、最終的にはインプラントの除去や喪失といった経過をたどる可能性があります。
 そこで今回は、インプラント周囲炎について調べてみました。

Risk indicators for peri-implant mucositis : a systematic literature review  (J Cli Periodontol 2015)


この論文は「インプラント周囲炎」に関連してその前段階である「インプラント周囲粘膜炎」について、そのリスク因子を調べたものです。
それによりますと、まず「プラーク(歯垢)」がインプラント周囲の歯肉炎が発症するリスクでエビデンスがあるとされています。一方で、インプラントを入れている期間、インプラントの性状その他は、影響が小さいか認められなかったとしています。インプラントはさまざまなメーカーから発売されていますが、それぞれが独自に骨と接する表面の性状(ザラザラさせる、小さいくぼみをつけるなど)を工夫しており、あるレベルに達していればどれも問題ないようです(もちろん疑問のある製品も存在します)。
 そのほか、「性別」や「遺伝学的な影響」も少ないとされています。意外にも、「糖尿病」はインプラント周囲粘膜炎に関して影響は認められないとのことでした。歯周病と糖尿病は相互に影響しあうという知見が得られていることからすると、さらなる考察が必要かもしれません。
 興味深いところとしてプラークと同様に「喫煙」がインプラント周囲粘膜炎に影響する因子としてにエビデンスが認められたとのことです。
 つまり、インプラントを長期にわたり健康な状態で機能させるためにまず「プラークコントロール」「禁煙」が必要ということが現在の知見ということになります。
 私も、今後これらを参考にしながら患者様への説明、予後管理への一助としてゆきたいと思います。
 

2016年07月10日