骨粗鬆症講習会

骨粗鬆症に関する講習会に参加してきました。
さまざまな要因で骨粗鬆症と診断されると骨折の予防(QOL維持)、骨が弱くなるのを防ぐための薬を使用されている方が多くなってきています。
これらの薬にはいろいろな働きにより骨の密度を維持しようとしています。使用方法や間隔も、飲み薬や注射、毎月や6か月ごとだったりします。

骨粗鬆症のお薬を使用されている患者さんの歯科治療に関して、特に歯を抜く(抜歯)処置について、傷の治りが悪く、
あごの骨が一部壊死してしまう状態、これを「骨吸収抑制剤関連顎骨壊死:ARONJ」と言いますが、約10年ほど前から海外で報告されるようになり骨粗鬆症の治療薬剤との関連が研究されてきました。
比較的新しい病態であること、薬剤の作用機序も多様で、発症する場合も他の疾患を併発しているなどの理由からさざまな学会が連携してきました。
その過程で定期的にポジションペーパーという公式見解を発表しています。最近では2014年に診断基準が公表されていましたが、今回2016年に新たなポジションペーパーが
日本では「顎骨壊死検討委員会」という学会横断の組織から公表されました。

今回の講習ではその委員の一人である松本歯科大学教授の田口先生が最新のポジションペーパーの解説と歯科診療との関連をお話しくださいました。
そのなかでは、:
・今まで薬剤性顎骨壊死(ARONJ)の主な要因と考えられていた種類の薬剤以外、新たな治療薬でも顎骨壊死が報告されていること。
・報告されている顎骨壊死の発生率はおよそ0.001%と、ほかの薬剤の副作用の発生率と比較して高いわけではないということ。そのリスクのとらえ方
・長期の骨粗鬆症の薬剤の使用が顎骨壊死の発生率に影響しない可能性が高いこと。
・歯科治療の際に現在一般的に行われている一時休薬のほうが顎骨壊死の発生率がたかくなる可能性があり、むしろ休薬する積極的な理由はないとのこと。
・患部への感染が顎骨壊死に大きく影響している可能性が高く、口腔ケアを含めた感染予防がきわめて効果的で重要であるということ。

このような見解は、現在の大学で使用されている教科書でも追いつかないような診断基準や治療方針の変化です。周知までも時間がかかるかもしれません。
今回この分野での最新の知見に触れることができました。当院でも問診をすると骨粗鬆症のお薬を使用されている方も多く、治療法の選択に難渋することもあります。
この講習会で得た知識を毎日の診療に活かしてゆきたいと思います。

2017年02月23日